ダイエーおおとり店、惜しまれつつ閉店
去る2025年1月31日、大阪府堺市西区にあるダイエーおおとり店が閉店。今回は閉店日の様子についてレポートする。
おおとりの街に根差した大型店
ダイエーおおとり店がオープンしたのが1980年10月17日。1980年オープンのお店といえば、4月3日生まれの元ダイエー熊本店(0505)、6月26日生まれのAFS摂津富田店(0338)である。元ダイエー熊本店も2月28日で閉鎖となるが、摂津富田店はまだまだこれから。
同期のお店が残る中での閉店はなんともいえないものである。

ダイエーの標準サインも残る。

ダイエー矢印も残るサッカー台。

お客様から寄せられたたくさんのメッセージ。

店内には4台目ロゴをあしらったデザインも。

美しい大きな翼。

清らかな心で見れば何かが見える塔屋。

さつま姫牛の銘板。これも見納め。

アルティフーズからのメッセージ。

ひと足早く、と書いている。

節分を迎えることができないゆえに、お客様のために先取りで恵方巻きを売っていた。
お客様の方を向いていないとなかなかできないこと。

この看板も見納め。
閉店セレモニー
閉店セレモニーは18時から、と告知がされていた。ただ、その告知の仕方もただものではなかった。
よくある「呼び込み君」で告知していたものの、そのBGMが合唱曲の「旅立ちの日に」だったのだ。
大空へ翔びたとうとする直前。選曲センスが光る。
セレモニー直前には山口百恵さんの「いい日旅立ち」が流れるように。
これは歌詞も相まってピッタリすぎて店内で涙してしまった。
(なお、最終日の特別放送のBGMもいい日旅立ちが使われていた)
18時を過ぎた頃、従業員が整列。
セレモニーの準備のために副店長が号令をかける。
「基本姿勢!」の号令とともに全従業員が一斉に基本姿勢をとる。かっこよさを感じた。
18時15分頃、最後のお客様が退店。
そうして18時16分頃から閉店セレモニーが始まった。
登壇者はダイエーおおとり店の店長、徳野さん。

ここに、その挨拶の全文を掲載する。
みなさま、こんばんは。
店長の徳野でございます。
今日はこんなものを作ってまいりました。
(紫色の巻物を掲げる店長)
ちょっと長いです。
本当に長い巻物が登場。40年以上の歴史は簡単には語り尽くせない。
そして、その巻物の中身はこう書いてあったようだ。
はい、それでは、ただいまより、店長の挨拶をさせていただきます。ここで、お客様からのコメントを読み上げられた。
みなさん、こんばんは。
本日は、お忙しい中、足をお止めいただきまして、誠にありがとうございます。
先ほど、最後のお客様が食品売場より退店され、無事、ダイエーおおとり店が閉店いたしましたことを皆様にご報告申し上げます。
ダイエーおおとり店の歴史は長く、1980年10月17日の地域住民の生活を支える地域密着型の大型スーパーとしてオープンいたしました。
食料品から日用品、衣料品まで幅広い商品を取り揃え、地域の人々の生活に欠かせない存在でございました。
1980年の出来事を調べてみたところ、海外では、アメリカで、レーガン大統領が就任されました。
また、モスクワのオリンピックが開催されたわけなんですが、アフガニスタン侵攻にソ連が出たために、抗議のため日本はボイコットした、という年でございました。
日本での出来事は、今流れている山口百恵さんが、ちょうどこの年に引退を決められました。そして、松田聖子さんが「裸足の季節」というデビューシングルでデビューをされました。
また、ポカリスエット、皆様もよくご存知だと思いますけど、この年に、新発売をされました。
そして、この年の日本レコード大賞は、八代亜紀さん、「雨の慕情」でございました。そしてこの後の紅白歌合戦での大トリ、大トリは同じく、八代亜紀さんの「雨の慕情」でございました。
概ねこの1980年という年は、平穏な1年だったという様相でございました。
そして、45年もの長い年月が過ぎ、地域の皆様に愛され続けてきたダイエーおおとり店でございますが、本日をもちまして、閉店と相成りました。
地域の皆様に愛されていたことは、店内に張り出しました、思い出、というね、ボード、こちらの方にたくさんの応募が、応募というかコメントをいただきました。
少し代読させていただきます。
子供の頃は、母と。
わたしが母になったら子供を連れて毎日のようにお買い物に来ました。
思い出がたくさん詰まったダイエー。長い間お世話になりました。
いまは亡き、母と学生の頃からよくお買い物に来ました。
たくさんの思い出が詰まった、ダイエーがなくなるのはとても残念です。
子供の頃、ダイエーはオシャレで、一人で行ってはいけない場所でした。
おばさんになったいまは、一人でお買い物をしています。
ダイエーと一緒に成長してきました。
閉店をすごく寂しく思います。
上の娘が45歳、彼女の年齢とともに通い続けたのですが、ダイエーが変わることは寂しいです店長は続けた。
皆様元気で働いてください。
74歳のおばちゃんより。
こういうね、コメントをたくさん頂戴いたしました。ダイエーの考え方がそう簡単に変わるとは思えない。
実はあのボードには、650枚ぐらいのコメントをいただいております。
コメントを1枚1枚読ませていただきました。
全部読みました。
そのコメントを読んでいると、やはり、ジワッと涙が滲んでまいってきた次第でございます。
そんな地域の皆様に愛され続けたダイエーおおとり店も、時代の波には勝てず、非常に残念ではございますが、このほど、閉店をすることとなりました。
店長として、今年(注:2024年)の夏前から店舗で実施してきた施策、功を奏しまして、食品売場のお客様が増えて、手応えを感じてきていた最中での閉鎖となってしまいました。
非常に残念な会社の決定で、不満を感じていたのですが、しかし、次に入店するのが、AEON RETAIL、ということで、逆に、地域の皆様にとっては、より、品揃えが増え、より、利便性が高まり、より、生活が便利になるのであれば、仕方ないのではないかな、って思うようになりました。
その新しい店舗には、わたし自身はかかわることは出来ませんが、鳳周辺の皆様にとっては、さらなる生活向上の場になることを切に祈っております。
いまのところ、AEON RETAILさんのオープンは、今年(2025年)の春頃、と聞いております。
当店の従業員は、AEON RETAILさんで、引き続き、お世話になる、ということを伺っております
ダイエーの気持ち、ダイエーイズムは従業員の心の中で、生き続けて、これからも、存続してまいりますので、ダイエーで培ったノウハウを、次のAEON RETAILさんでも、存分に引き継いでくれると思っておりますので、今年の春、オープンいたしましたら、ぜひ、ダイエーおおとり店の従業員が、元気で、働いている姿を、見に来ていただきたいな、と思っております。
長くなりましたが、店長のお言葉とさせていただきます。
本日は、ありがとうございました。
ダイエーの従業員は「人が好き」「店が好き」なのだから。
花束贈呈
挨拶が終わった直後、地元のお客様からの花束贈呈。実はこれ、用意があったようなのだけど、挨拶に来たお客様に花束の贈呈をお願いしていたようだった。
「店長さん、みなさん、ありがとうございました」の言葉とともに花束が店長に手渡された。
最後の挨拶
店長の最後の挨拶。「それではいきまーす!」の合図。
「45年間」
「「ありがとうございました!!」」
全従業員の挨拶とともにシャッターが閉じられた。
ただ、一つだけ文句をつけるとすれば、幕引きの瞬間に警備員がバタついていたこと。
やらなければいけないのはわかるが、店長の前を遮るでない。
こればかりは店長に対して、お店に対して失礼である。
店長の想い
閉店セレモニーで店長の挨拶を何度も聞いているが、会社の決定に対する不満をはっきりと口にしたのは、わたしが参列した中ではおおとり店が初めてである。それもそうで、自分自身頑張って成果を上げてきたお店が閉鎖されるというものは悲しいものであろう。
また、ダイエーの店長は、「言われたからやる」店長ではなく、「自分のお店」としての意識が強い店長である。
それもそのはず。
ダイエーグループの従業員の行動指針である「ダイエーグループの誓い」にはこんな一文がある。
「人を愛し、店を愛して、日々美しい努力を続けます。」
だからこそ、最後までお店を愛して、美しい努力を続けたのだろう。
店長なりに最後までお店を盛り上げる施策を考えていたようだ。
それが、1月30日、最後の木曜日だった。
ダイエーがかつて実施していて、お客様から圧倒的な支持を得ていた「木曜の市」の復活である。

これはただただ復活させただけではない。
往年の雰囲気を完全再現させ、「おかずバイキング」など人気企画も復活。
さらに店内では「モッくんの歌」を流し、店長の名前入りの特別放送でもこの歌を使用。
それだけではなく、日中には「モッくん」が来店。
本来の業務に久しぶりに携われたこと、モッくんも嬉しかったことだろう。
そして、こんなものまで。

レシート提示でもらえるプレゼントも用意されていた。
これは配布終了の20時まで持ち堪えた模様。
さらにさらに、店内の一部従業員はハッピを着用。
背中には「祭」と書いている水色のハッピ。
襟の部分には「ダイエーおおとり店」と書いてあった。
しかも「ダイエー」のロゴタイプは3代目のもの。
どこで見つけたのかはわからないが、店長のお店への愛がすごいことになっていた。
店長のかっこよさ
閉店当日は混み合うのが常。混み合う店内を見ては的確に放送をする様子が見てとれた。
「レジは左側が空いております」
「最終売りつくしを実施しております」など、事務所からやっているのかと思えば売場で直接様子を見ながら携帯電話から放送をしていた。
そうして店内を歩く店長の後ろ姿はとてもかっこよく見えた。
最後には「全売場の従業員」に対して、「お客様が残っていないかの確認」を指示。
最後まで、現場の人だった。
道半ば。
店長自身、手応えを感じてきたところでの閉鎖に対する不満を持っていたというのは先述したとおりだが、調べてみると納得した。店長の着任が2024年3月。着任から1年経っていないのである。
しかも、おそらく初めての大型店の店長。
なんとも言えないところであろう。
おおとりの地でこれから頑張っていこう、と思った矢先の閉鎖。
お店は会社に従うまで。と言ってしまえばそれまでだが、走り始めた矢先なので、「そんなのおかしいよ!」と思うのもわからなくもない。
おおとりが翔びたつ日
わたし自身、おおとり店までは遠いものの、行けばダイエーの匂いがするので好きなお店の一つだった。そこで、閉店に際し、僭越ながらこんなポスターをつくってみた。

すべての関係者に、感謝を。
そして、おおとり店よ、永遠に。